第35回定期大会で「大軍拡路線と軍事研究に反対する」決議を採択しました
日本私大教連は11月20日、第35回定期大会を開催し、今期総括案、来期方針案、予決算案等を可決し、来期役員体制を確立するとともに、大会決議として「大軍拡路線と軍事研究に反対する」を採択しました。
以下に全文を掲載します。
[第35回定期大会決議]大軍拡路線と軍事研究に反対する
ロシアによるウクライナ侵略は、ひとたび戦争が勃発すれば、いかに悲劇的な事態を招くかを改めて浮き彫りにしています。ところが岸田政権は、ウクライナ危機、米中対立、台湾情勢の緊張の高まりに便乗し、中国への軍事的対抗姿勢をあらわにして、戦後に類をみない大軍拡と9条改憲の動きを強めています。
岸田政権は、5年間で軍事費を「2倍化」するというかつてない規模の大軍拡に踏み出そうとしています。防衛省の2023年度予算概算要求は、過去最大の5兆5947億円を計上したのに加え、金額を示さない「事項要求」を多数盛り込みました。年末に向け「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を改定し、「専守防衛」を踏み破る「反撃能力」=「敵基地攻撃能力」の保有も進めようとしています。これにより最終決定する軍事費は6兆円台半ばに達するとも見込まれています。軍事力の強化策を検討するために内閣官房に設置された「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(以下、防衛力有識者会議)は、軍事費をねん出する財源について「幅広い税目による国民負担が必要」との考え方を示しています。
この大軍拡路線は、東アジアに「軍事対軍事」の悪循環、軍事緊張の激化をもたらす極めて危険な道であるとともに、国民生活の全般を長期にわたり圧迫する愚策です。
加えて、私たちにとって看過できないことは、岸田政権がめざす大軍拡路線は、学術界の協力なしには実現し得ないものであるという点です。政府はすでに、防衛力の強化に関し、「研究開発、公共インフラ整備、同志国などとの国際的な協力、サイバー安全保障」の4分野の経費を「総合的な防衛体制の強化に資する経費」(総合防衛費)と位置付ける方針を固めています。防衛力有識者会議は、大学などの学術界が防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に慎重な姿勢をとっている現状を打破するために、新たな「科学技術分野と安全保障分野の協力枠組み」を構築する議論を進めています。国家安全保障会議と総合科学技術・イノベーション会議を軸に関係府省庁の連携を強化するとともに、国立研究開発法人を防衛力強化目的の研究のハブとして、大学における基礎研究や各種プロジェクト研究を囲い込み、軍事技術と産業技術に「マルチユース」する枠組みを構想しています。今年の通常国会で成立した「経済安全保障推進法」の4本柱の一つである「先端的な重要技術の開発支援に関する制度」も、同様の発想にもとづいて経済競争力強化や軍事力強化の上で利用可能性がある先端的な重要技術の研究開発の促進と「その成果の適切な活用」を目論むものです。
軍事力で戦争を防ぐことはできません。それにもかかわらず、いま、私たちの目前で、大軍拡と「軍事技術開発への研究者の動員」(内閣官房経済安全保障法制準備室)が着々と進められようとしています。科学者は「公共の福祉の増進に寄与するとともに、地球環境と人類社会の調和ある平和的な発展に貢献することを、社会から負託されている存在」(日本学術会議憲章)です。私たちはこのことをあらためて確認し、大軍拡と軍事研究の推進に断固反対します。
2022年11月20日 日本私大教連第35回定期大会